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【防災のプロに聞いた】大学生の一人暮らしで防災を考える

大学生になってから一人暮らしを始める方も多いですが、災害への備えはちゃんとしていますか?
私の周りの一人暮らしをしている人に聞いてみたところ「実家では備蓄をしたり避難場所が分かっていたりと防災をしていたけど、一人暮らしをしてからはあまり行っていない」という人が多かったです。しかし、一人暮らしで周りに頼れる人が少ないからこそ、もしもの時のためにしっかり備えておくべきです。

そこで今回の記事では、防災のプロである相日防災株式会社の小松さん、峯尾さんに「一人暮らしの防災」に関してお聞きしました。

  

相日防災とは

―相日防災はどんなお仕事をされている会社ですか?

(小松)私たちは建物の消防施設の点検・メンテナンス作業をメインに行っている会社です。また、一般の方や公官庁に向けて防災グッズの販売なども行っています。また、ネットショップ「あんしんの殿堂防災館」を運営して防災グッズの販売を行っています。あんしんの殿堂防災館は、本店、楽天店、YAHOO店、amazon店の4店舗有り、楽天市場には1999年から出店している老舗です。

災害が起こった時の行動について


ー災害が起こった時の原則は何ですか?

(小松)身の安全の確保が最優先事項です。備蓄をすることなども大切ですが、それらは命が助かった後に必要になる物です。まずは家の中のものの転倒防止策や、避難経路の確認などはしっかりしておかないといけません。地震が起こってから慌てて確認しても、普通の精神状態ではないので絶対にうまくいきません。余裕がある時に確認しておくのが重要です。
一人暮らしの場合は、家族との連絡手段や、安否確認の方法をあらかじめ決めておくのも重要です。「地震が起きた時はここの避難所に行く」と伝えておくだけでも、ご家族の方がみなさんを探しに危険な場所に出向くリスクなどを減らせます。

 

避難所に関して


ー実家の場合は避難所が自分の通っていた学校だったのですが、今一人暮らしをしているところの避難所は全くなじみのない小学校なので、少し使用するのに壁を感じてしまいます……。

(小松)避難所は行政がその地域の住民に向けて開放している場所ですし、何より自分の身の安全を確保するための場所なので、災害が起こった場合は躊躇せずに避難所に行ってほしいと思います。

(峯尾)避難所では人手が必要なことも多いです。特に学生さんのような若い人たちの力があると助かることがあるので、避難所に行くのを躊躇してしまう人は、手伝いをしに行くと考えてもらうと良いかもしれません。

 

ー具体的にどんなお手伝いができるんでしょうか?

(小松)私が熊本や北海道の地震の時などに訪れた避難所では、トイレの掃除や、支援物資が届いた時の管理、公共の場所の整理整頓、お年寄りのお手伝いなどをしていましたね。他にも、備品や食事を受け取るのに並ばないといけないことが多いのですが、お年寄りの方には負担なので、若い人が代わりに並んで受け取っていました。これらは本当に一例で、避難所では色々なところで人手が必要になるので、ぜひ学生のみなさんには進んでお手伝いをお願いしたいです。

 

ー家にいて地震が起きた時にはどんな行動をすればよいのでしょうか?

(峯尾)自宅に待機するのか避難所に行くのかの判断は、今いる建物が安全かどうかがネックになります。
熊本地震の時などに赤や緑の紙が家に貼られているのを見たことがあるかと思うのですが、災害が起きると応急危険度判定士という人がそれぞれの建物を見て、この建物が危険かどうか判断してくれます。ですが、応急危険度判定士がすぐ自分の家に来てくれるとも限らないので、身の危険を感じたらすぐに避難所に行った方が良いと思います。一旦すぐに避難所に行って、応急危険度判定士が安全だと判断してから家に帰ってもいいわけですし。

応急危険度判定士とは
大規模災害発生時に、その後に発生するさらなる余震などによる倒壊の危険性、外壁、看板や窓ガラスなどの落下、付属設備・機器の転倒・落下などの応急危険度判定を行うことのできる資格を持った人のことである。応急危険度判定士になるためには建築士の資格を持っていて、判定士の養成を目的とした講習会を修了する必要がある。
応急危険度判定は、判定士が2人1組となって、建築物の外観を目視し行う。判定後、「調査済」(緑)、「要注意」(黄)、「危険」(赤)のうちのどれかを見やすい箇所を判定した建築物に掲示し、居住者をはじめとした一般人に状況を知らせる。なお、「危険」が出た場合は立入禁止となる。
一般財団法人日本建築防災教会HPより
 
 
 
 
 
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ー大学にいる時に地震が起きた場合はどうすればよいでしょうか?

(峯尾)多くの大学は避難所になることを想定していて、学生の数+地域の人の分の食べ物や毛布の備蓄をしているので、自宅に帰るよりも大学にいた方が安全だと思います。大学は建物そのものが丈夫ですし。

 

ー地震以外の災害に備えて何かしておくべきことはありますか?

(小松)台風は災害前に情報が出ることが多いので、窓ガラスの補強をしたり食料や水を備蓄したりすることですね。また火災に備えては消火器の場所と使い方を把握しておくことが大切です。消火器は見たことがあっても使い方が分からないという人も意外とたくさんいて、初期消火が出来ずに大火事になってしまったというパターンが多々あります。使い方と同じように、どこに消火器が置いてあるのかは常々確認しておくことが大切です。

インテリアに関して

ー一人暮らしを始めるにあたって家具を購入する人も多いと思いますが、防災の観点から家具を買う際のアドバイスをお願いします。

(小松)防災の基本は「転倒防止」なので、どんなものを買うにしても固定はしっかりしたほうが良いと思います。地震が起きた時に下に隠れるように、テーブルなどはなるべく頑丈な作りのものが望ましいです。

(峯尾)背丈の高い家具は転倒の危険があるのであまりお勧めできません。学生さんだとワンルームに住む方が多いので、寝ている場所のそばにものを置くことになると思います。そこに倒れ掛かってくると危ないので、なるべく背丈が低くて、重心が下にある家具を選ぶといいと思います。背丈が高い家具は上下で分かれているセパレートタイプになっているものが多いです。その場合は上下を固定する金具がついているはずなので、それを面倒くさがらずにつけることも大切です。
また、扉がついている家具に「耐震ラッチ」を取り付けるのも大事です。耐震ラッチは地震で揺れた時に自動でロックをかけてくれるものが増えているので、扉が開いて中身が飛び出てくるのを防いでくれます。これから家具を購入する際には耐震ラッチがついているものを選んだ方が良いですが、後から耐震ラッチのみを購入して取り付けることもできます。

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ー家具の配置などで気を付けておくべきことはありますか?

(小松)地震が起きた時の大原則は、身の安全の確保と避難経路の確保です。避難経路の確保という観点から考えると、出入り口のそばにものを置かないというのはポイントになります。

(峯尾)倒れた家具などが邪魔になってドアが開かなくなることが一番危ないので、出入り口の確保は大切です。また、家具の配置の前に部屋を借りる際にも防災を意識することができます。もともと備え付けの収納がついている部屋を選び、その収納を利用することで災害時のリスクを減らすこともできます。後は、防災という観点から言うと、物はなるべく少なくしてすっきりとしたシンプルな部屋が好ましいですね。

 

ー引っ越しをしたときにするべきことはありますか?

(小松)役所のHPにハザードマップや避難所の情報が載っているので、それを見て災害が起こった時にどこが危険なのかなど、住んでいる場所の状況は確認しておくべきです。災害時には当然想定外のことが起きる可能性はありますが、事前に想定されているリスクを把握しておくことが命を守ることにつながります。
また、これは住んでいる場所にもよるのですが、電車が止まった時を想定して、学校から家まで一度歩いて帰ってみる。有事にいきなり体験するのではなく、普通の状態の時にやってみることで課題が見えてきます。「こうなった時はどうしよう」とあらかじめ考えておくことで、いざというときに慌てず行動することができます。

(峯尾)役所でほとんどの情報は得ることができますが、ご近所さんとのコミュニケーションを日ごろから取っておくことも非常に重要です。その地区独特の災害のことや、防犯のことなどを把握できることができるので。

備蓄に関して

ー備蓄に関して、どんなものをどのくらい準備しておけばよいのでしょうか

(小松)都条例では食料、保存水、トイレは3日分の備蓄をしておくように言われています。ですが、都心で大規模な災害が起こったとして、3日後に応援物資が手元に届くかと言われると……微妙なところなんですよね。なにせ、物資を必要としている人数があまりにも多いので、どこまで迅速に行き渡るのか……。都条例では3日分となっていますが、最低でも3日分。できればもっと用意しておいた方がいいと思います。

(峯尾)災害時の食糧供給などをコンビニと提携しているところもありますが、都心部で道路が遮断されてしまうとコンビニにも食料が届かなくなってしまうので。行政に頼りすぎずに、最低でも3日間自分で生き抜くための食料は確保しておいた方がいいと思います。

 

ー非常食に関しては食べて買い替えながら備蓄をする「ローリングストック」がおすすめとも言われていますよね

ローリングストックとは
非常食をただ買って備えるだけでなく、日常から消費して、常に一定量を自宅に備えていくという方法。備蓄品の賞味期限切れなどを防ぐことができる
 
 

 (小松)そうですね。特別な非常食を用意するのではなく、普段食べているものを備えておくという考え方ですね。一番の利点は、常に備えができるのと、非常時にも普段と同じものを食べられるということです。

(峯尾)ローリングストックというとみなさんカップ麺などに走りがちですが、東日本大震災の時などに非常食として全国からカップ麺が届き、もう2度とカップ麺を食べたくないと思ったという人も多いそうなので、まんべんなく色々なものを用意しておいた方が良いですね。そういった意味でも缶詰はおすすめです。がれきの下から掘り出したものでも食べられるし、何よりおかずなどの種類が多いので、普段の食事にも取り入れやすいです。災害用に特別に用意するというよりは、いつも食べているものを「切らさない」ことが重要です。

 

ー一人暮らしの狭い部屋だと備蓄品をどこに置いておくのかが課題になりますよね。

(峯尾)そうですよね。それは本当に大変だと思います。理想を言うと玄関口においておけると一番いいんですけど、ワンルームとかだと玄関が狭いことが多いですもんね。

(小松)下駄箱の中とかに入れちゃうのとかもおすすめです。

 

ー災害時の持ち出しバッグに「これは入れておいた方がいい」というものはありますか?

(小松)最近だとコロナのことがあるので、マスク、除菌用のスプレー、ウェットティッシュなどはマストになってきていますね。後は万能ナイフなんかも色んなことに使えたという話はよく聞くので、持ち出し品の中に加えておくとよいですね。


日本赤十字社「非常時の持ち出し品・備蓄品チェックリスト」

 

(小松)大体このリストにあるようなものを用意しておけばよいと思いますが、ラップと布ガムテープも入れておくと安心です。ラップは怪我をしたときの応急処置で固定するのにも使えますし、お皿にラップをかけることで食器を洗う手間がなくなります。文字が書ける布ガムテープは伝言としてメモを残すのにも活用できるので便利です。

(峯尾)あと、東日本大震災で被災された方々から、手回しラジオがとても役に立ったという話を聞いているので、余裕があればぜひ手回しラジオも持ち出し品の中に入れておいていただきたいです。

 

ー私自身幸いなことに、今まで避難所に行かなくてはいけないほどの大きな災害を経験したことが無いのですが、何か意識しておくことはありますか?

(小松)災害時には本当に何がおこるか分からない状況になるので、色々調べたり人に話を聞いたりして、それを自分だったらこうしようと考えておくのが大事だと思います。ですが、実際に考えているだけだと分からないこともあるので、地域で行っている防災訓練などに参加していただきたいです。平時にできないことはいざというときにできるわけがないので、

(峯尾)避難所生活では痴漢や女性が襲われてしまうことが多々あります。複数人で行動することでそのリスクは避けられるので、特に女性は一人で行動しないでいただきたいです。 

 

ー防災に関して大学生に伝えておきたいことはありますか?

(小松)当たり前のことになってしまいますが、災害はいつか起こることです。実際に起こってみないとどうなるか分からないという部分はたくさんありますが、自分の身は自分で守るしかないので「自分は大丈夫」と考えずにしっかりと準備をしておくことが大事です。
また、自分の準備不足で助けが必要になったら、救助に来た人たちも危険にさらしてしまうことになるので、出来る限りの準備を普段から行うことが大事だと思います。

(峯尾)まずは自分の安全を確保することが大前提ですが、避難所などでは学生の皆さんの若い力が必要になるので、積極的に避難所などで活躍していただければと思います!

 

ーありがとうございました。
 ガクセイ基地では以前、家に置きたくなるお洒落な消火器+maffs 「+ 住宅用消火器」の取材をさせていただきました。こちらの記事も併せてご覧ください
>自宅に置きたくなる+maffs「+ 住宅用消火器」に込められた想い

 

 

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