気軽に読めて面白い本を紹介していくシリーズ、第2弾!
第1弾では「中卒労働者から始める高校生活(著・佐々木ミノル、日本文芸社)」
を紹介しました。
今回は「毎日かあさん」
でも有名な漫画家・西原理恵子さん作の
エッセイ・「この世でいちばん大事な『カネ』の話」
を紹介します。
この世でいちばん大事な「カネ」の話(著・西原理恵子、理論社)
「生まれる場所を、人は選ぶことができない。
だとしたら、ねえ、どう思う?
人って、生まれた環境を乗り越えることって、
本当にできるんだろうか。」
こんな書き出しで始まる本書は、
著者の波乱万丈な人生を語る中で「カネ」を主軸においた人生観が書かれています。
● 割れた窓ガラスを修理するお金もないような家々が並ぶ貧しい田舎町で育った。
● 地元では一家で借金を抱えてしまい、家族ごと消えた友達やシンナーの吸いすぎで死んだ先輩などもいた。
● 自分が美大を受験する当日に父親が借金で自殺した
など、ガクセイ基地の当コラム作者からは
想像もつかないような重い話がたくさん書かれています。
数々のエピソードを通して、
著者は「貧困」とは何なのか、「カネ」とは何なのかを読者に語り続けます。
●「貧困」と「暴力」が子どもの居場所を失わせていた。
●「貧しさ」と「寂しさ」は連鎖していく。
● お金はさみしがり屋だから、すぐ友達(お金)の多いほうにいってしまう。
実際に著者が体験したからこそ分かったこと、書ける名言なども多く、
とても感銘を受けました。
著者の西原さんを知っている人ならご存知かもしれませんが、とにかく面白い生き方をしている人です。
カンボジアの地雷原を散歩したり、(「できるかなリターンズ」⦅角川文庫⦆に収録)
FXで自分のアトリエを建てるための資金一千万をすべて溶かしたりと
(「西原理恵子の太腕繁盛記」⦅新潮社⦆に収録)
めちゃくちゃなエピソードをたくさん漫画にしています。
また、いじめや貧困をテーマにした漫画もたくさん出しています。
作品がいじめや貧困という重いテーマにもかかわらず、西原さんの作品は
主人公を応援するような、力強くも優しい空気に包まれています。
(「ぼくんち」⦅小学館⦆、「いけちゃんとぼく」⦅角川文庫⦆など)
自身をネタにする、勢いのある作品と
厳しい世界を優しいまなざしで描いた作品。
2種類の作品が描ける漫画家はあまり多くはいないと思います。
どちらもとても面白く、
著者の生き方や感性が漫画に反映されているのかなと思いました。
そんな万能な漫画家になる経緯を書いたこのエッセイ。
とにかく重い話ばかりなのに、ときどき笑える話もあってとにかく面白い!
「こんな生き方をしている人間もいたんだ」
「行き当たりばったりでも信念をもっていればどうにかなるのでは」
などと肩の力を抜いて、
楽しみつつ感動することができます。
読んで後悔はきっとしないでしょう。
Add Comment