ちょっとした発想の転換で、思い詰めていた悩みが少し軽く感じられたり、ふと何気ない出来事に幸せを感じられたり。そんな経験、みなさんにもありませんか?
「思い込みを手放して、人生を変えるヒント」がぎゅっと詰まった、韓国エッセイ『+1cm』シリーズ。世界12ヵ国で翻訳され、シリーズ累計100万部を超える異例の大ベストセラーとなっています。
今回はそんな『+1cm』シリーズの日本語版編集をご担当された、文響社・翻訳書編集部の森彩子さんにインタビュー。日本語版編集の工夫や本シリーズの魅力をたっぷりと伺ってきました!
目次
「続編も読者の方に届けたい」
ー森さんが『+1cm』シリーズの編集担当者となった経緯を教えてください。
シリーズの日本語版として『+1cm』『+1cm LOVE』『+1cm LIFE』『+1cm IDEA』が刊行されていますが、私は『+1cm LOVE』以降の3冊を担当しました。
文響社に入社した年に、「続編も日本語で出しませんか」という話がちょうど会社の方に来ていて。前任の編集者がすでに退職していたので、社内で新しく担当者を募っていたんです。
当時入りたてで「とにかく企画を色々やらなくちゃ!」という気持ちがあったのと、元々別の出版社で児童書の編集をしていたので「私にもできるかな…」と思って、手を挙げました。
ー元々、子ども向けの本を作られていたんですね…!
そうなんです。実はそれまでは大人向けの本を1冊も作ったことがなくて…。でも『+1cm』は大人向けの絵本のような感じもあったので、挑戦してみようと思いました。
あとは私自身、韓国の音楽が好きですし、韓国の児童書にも興味があって前の会社で企画を出したりしていたので、担当できるのは願ったり叶ったりという感じでした。
日本語版『+1cm』の編集には工夫がいっぱい!
ー「翻訳書の書籍編集」って具体的に何をするのか気になります。どのように編集作業を進めていかれたのでしょうか。
前任の編集者が手掛けた『+1cm』を参考にしながら作っていきました。タイトルやページの構成など、韓国語版と日本語版の『+1cm』を見比べると、変えているところがたくさんあって。
例えば最初の1ページ目ですが、日本語版オリジナルで「+1cm」という考え方を、一瞬で読者に理解させてくれるような「はじめに」が追加されていたんです。
「たった1cm、ものの見方を変えるだけで世界が大きく変わる」という作者のキム・ウンジュさんの考え方を読者にどれだけわかりやすく伝えられるか。すごく考えながら日本語版を作ったんだなと実感しました。それで私も、もちろん原作者の許諾を取りながら、色々と編集で変えていきました。
ー最初にご担当された『+1cm LOVE』では、例えばどういったところを変えたのでしょうか。
ページ構成をかなり変えています。ちょっと難解なエッセイを後ろに移動したり、本のテーマである「愛」をストレートに綴ったエッセイを冒頭に持ってきたりしました。
「はじめに」も付け足しています。ここを読めば「あ、こういうことが書いてある本なんだな」と読者の方に伝わるように、書いたり消したりを繰り返しながら頑張って仕上げました…笑
ー森さんが書かれていたんですね…!!驚きです!
あとは、デザインとイラストの書き文字ですね。実は当時文響社の総務部で働いていた同僚に、翻訳した日本語を手書きで書いてもらっているんです。
それをひとつずつスキャンしてデザイナーさんが配置しています。すごく可愛い字なので、前作の『+1cm』に引き続きお願いしました。
ー編集をされる際に、特にこだわったことはありますか。
『+1cm』は癒しの本なので、翻訳者さんとのやりとりを重ね、読んだときに気持ちよく染み込んでいくような言葉を選ぶように心掛けました。
単純に日本語に訳しただけでは、ちょっと伝わりづらかったり、理屈っぽくなったりしてしまう部分が多かったんです。
なので少し意訳をしてでも、作者が伝えたい「+1cm」の考え方を、「私にもできそう!」とか「こういう風に考えたらいいんだ!」と読者に思ってもらえるように工夫しました。
「1cmだけ世界の見方を変える」は、発明的なアイデア
ー日本語版編集をご担当された森さんの思う『+1cm』シリーズの魅力を教えてください。
ページのすみずみから、キム・ウンジュさん(文)とヤン・ヒョンジョンさん(イラスト)のお二人が「楽しくてたまらない!」という感じで、この本を作っているのが伝わってくるところです。
ちょっとした思い込みを手放して見方を変えるだけでポジティブになれるよ、というのをお二人もこの本の中でいきいきと体現していて。
作り手の愛とエネルギーがつまっているから、いつ手にしてもポジティブな気持ちになれるし、読むたびに新しい気付きや発見、そして癒しがある。お守りみたいによりそってくれるのが、このシリーズの魅力だと思います。
ー最後に、『+1cm』シリーズ4冊それぞれの違いを教えてください!
ベストセラーになった『1cm』(日本語版『+1cm たった1cmの差があなたの世界をがらりと変える』)は2013年に韓国で刊行されましたが、実はそれよりずっと前2008年に、キムウンジュさん作の『1cmオリジン』という本が刊行されているんです。
これが、2021年弊社刊行の『+1cm LIFE たった1cmの差があなたの未来をがらりと変える』です。

「1cmだけ世界の見方を変える」というのは、作者の発明的なアイデアだと思うんです。
思い込みって1cmぐらいの厚さのもので、それを取ってしまえば世界はまったく違うふうに見えるんだ。ということに、おそらくキム・ウンジュさんは2005〜2006年頃には気付かれていたのだと思います。
それを温めて温めて2008年に本として出されたのかなと。なので『+1cm LIFE』がこのシリーズの原点、“基本の+1cm” なんです。
ー『+1cm LOVE』と『+1cm IDEA』は、『+1cm』『+1cm LIFE』と比べると比較的テーマがはっきりしているように感じますね。
『+1cm LOVE』は、毎日はこんなも愛に溢れているんだと気付かされる一冊です。恋人・友人・家族など、当たり前のように続いている関係が実はすごく大事な繋がりなんだなとか、愛ってむずかしいことじゃないんだなと思えるようになる本ですね。
『+1cm IDEA』は、遊び心たっぷりの一冊です!原書のタイトルは『1cm art』。芸術作品を見てわきおこるわくわくは日常にも見つけられるよ、毎日だってアートのように輝かせられるよ、と作者たちがあらゆる手をつかって教えてくれます。読んでいると心が踊りだす、“シリーズの中で一番楽しい本”です。
まずはぜひ、『+1cm』をお守りにしてもらって、LOVE・LIFE・IDEAの中からお気に入りの『+1cm』を見つけてもらえたら嬉しいです!
ーありがとうございました!
編集後記
「人生は、“受け止め方”で変えられるんだ!」と気付かせてくれる、『+1cm』シリーズ。
思わずはっとさせられるような「核心をついた言葉」が盛り沢山なのはもちろん、可愛いイラストと優しく語り掛けるような文章に、読むたび心が癒されます。
韓国エッセイが好きな人も、まだ読んだことのない人も、ぜひ手に取ってみてくださいね!
翻訳家・藤田麗子さんインタビュー 『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』すべての“疲れた人”に寄り添う優しい訳文が生まれるまで
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