今回は関東を中心に難民支援をしているBONDの学生メンバー、真栄田さんにお話をお伺いしました。
「今話題になっている難民問題だけど正直よくわからない…」
「重大な問題だけど結局何ができるのかわからなくてアクションを起こせていない…」
筆者も取材に行く前に日本の難民政策に問題があることは知っていましたが、それをどう自分ごとにし、行動するのかまでは考えが及びませんでした。
今回は私の難民政策への疑問に対して、より当事者の立場を知っている真栄田さんからお話をお伺いしました。
「知ることが大きな一歩」 ぜひこの記事で一緒に日本の難民政策を考えましょう!
週1、2回入管まで面会に行くなど、精力的に活動をしている。
目次
はじめに
ポイント ✔️BONDに入ったきっかけは安田菜津紀さんの写真展を見て、自分も社会問題に対して行動を起こしたいと思ったこと ✔️みんなが最初から難民に詳しいわけではないが、活動する中で当事者と共に声を上げる大切さに気づく |
面会活動
はい、入管の収容施設は関東だと東京の品川にある東京出入国在留管理局と茨城の牛久にある東日本入国管理センターがあります。存在自体、知らない人も多いと思います。
はい。ただ面会するには身分証明書が必要で、面会理由などを受付で職員に申請した上で行います。面会の際はスマートフォンなどの電子機器は持ち込み不可で、紙と鉛筆だけ持って面会室に入ります。
まるで刑務所の面会みたいです…。面会ではどんな人とどんな話をするのですか?
BONDで面会しているのは、帰国できない切実な事情を抱えている人です。不適切な医療の問題は今も深刻ですが、収容施設の内部で何が起きているかは、面会をしないと知ることができません。また、法律の改正や私たちの運動など、外で起きていることも伝えます。
そうなんですね。面会を通して真栄田さんが一番印象に残っているエピソードはありますか?
ポイント ✔️品川入管をメインとした面会活動を行う ✔️持ち込めるものはペンとメモ用の紙のみ ✔️面会を通して収容されている人たちの生活を知ることができる |
活動で大事にしていること
一番大事にしていることは「当事者の立場に立つ」ということです。実際に入管している方の環境を変えていくには、まず当事者の声を聞くことが大事だと思います。
「助けてあげたい」という私たちの思いだけではなく、当事者の視点から問題を捉えて、私たち市民に何が求められているか考える必要があります。
当事者は日本で生きていきたいという切実な思いを抱えています。当事者には、入管に対してそれを求める権利があります。問題を根本的に解決するためには、当事者と共に声を上げていく必要があります。
入管に収容されている人の中には、長年日本で働いてきた人、低賃金でいわゆる3K労働をして、日本社会を根底から支えてきたような人や、自国で政治活動をしていたために難民となり、国に帰れなくなったというような人がいます。今の日本の状況に「おかしい」と力強く声を上げている人もいます。 だからこそ、私たちも当事者の訴えに連帯することが重要だと思います。
ポイント ✔️「当事者の立場に立つ」ということは「視点の持ち方を変える」ということ ✔️「可哀想だから助ける」という同情の気持ちだけではない ✔️「当事者と共に声を上げる」を目標にしている |
日本の入管法 残る課題
日本の入管法について調べれば調べるほどたくさんの”なぜ”が浮かび上がっていきます。真栄田さんはどのようにお考えですか?
本当にたくさんの問題点があるのですが、問題の根本は入管の権限が大きすぎること、そして当事者の人権が守られていないということです。日本は難民条約に入っているにもかかわらず、難民認定率が他国と比べ極端に低く、難民認定の運用が国際基準からかけ離れています。それにもかかわらず、「難民申請を繰り返す人は難民ではない」と決めつけて、申請を3回以上した人には申請中でも強制送還を可能にするというのが昨年6月に成立した改正入管法の内容です。また、帰国できない事情を抱えた人に刑事罰を科す、監理措置という当事者への管理・支配を強化する制度など、問題は多くあります。
ただでさえ、入管収容施設内の処遇や、仮放免の許可の基準が不明確であることなど、入管の裁量の大きさゆえに様々な場面で人権侵害が生じているのに、それが法改正によってさらに深刻化することになります。
現場で当事者の声を聴いている私たちが、問題をより多くの人に知らせ、社会問題化すること、そして市民の声を可視化することが必要になります。入管は大きな権限を持っているから、変えることが難しいようにも思えますが、入管も一行政機関に過ぎないので、有権者である私たちの声を無視することはできません。変えられるのは私たちなのです。
なるほど。日本の入管法を変えるためには世間一体となって問題解決に向かう必要があるのですね。
ポイント ✔️入管は第三者に意見を言われることがないので誰も止められない構造ができている ✔️一番大事なのは市民が変わること。そのためには世論形成が最適な手段。 |
私たちが今できること
たくさんの質問にお答えいただき、本当にありがとうございました。最後に、私たちが難民問題を解決するためにできることはなんでしょうか。
「関心を向けて、発信をすること」です。当事者はいつも、「ひとりでも多くの学生に、私たちのことを知ってほしい。若い人もぜひ発信してほしい。」 と訴えています。選挙に行って投票をすることだけが、政治や社会を変える手段ではありません。
ニュースはもちろん、大学の授業でも、どこかのイベントでも、世の中の問題に触れ、それに興味を持って発信すること。一人ひとりの声が集まれば、大きな声にできます。デモなどのアクションに参加することに抵抗があれば、最初は見てみるだけでも、現場の熱気や切実な思いが伝わってきて、多くのことを学べると思います。
なるほど、「小さな声を大きな声にする」これが私たち大学生にできることの一つですね。
ポイント ✔️選挙だけが自分の意見を通す手段ではない ✔️「興味を持って、発信すること」それが今の私たちにできること |
ーこの度はインタビューをお受けいただき、誠にありがとうございました。ー
編集後記
今回初めての取材をBOND様にさせていただき、たくさんの発見がありました。
1つ目は自分の周りの社会問題に対して、こんなにも全力で取り組んでいる人がいるということです。私は入管の問題はニュースなどで見たことがありましたが、実態について自ら知ろうと思ったことはありませんでした。今回の取材活動ではそんな自分とは裏腹に、問題に真摯に向き合い、尽力される皆さんを知ることができました。
2つ目は社会問題においてどれほど市民・世論が大事なのかを痛感しました。真栄田さんがインタビュー中にもたくさん仰っていたように、社会問題を解決するためにはまず国民一人一人が「それは問題だ」と意識を向けることが非常に重要な要素です。微力ではあると思いますが、この記事を見て少しでも多くの人にこの問題を伝えられていたらなと思います。
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