好きを見つけよう

広島大学映画研究会/小城大知さん

こんにちは。今回は、全国の大学生によるオムニバス映画『突然失礼致します!』に参加されている広島大学映画研究会の小城大知さんにインタビューをお届けします。

 

広島大学映画研究会について

・広島大学映画研究会では、日頃どのような活動を行っているのでしょうか?

 映画研究会と聞くと、想像するのは、自主映画を作っている、映画鑑賞をしているというイメージを抱くと思います。ですが、うちの大学では、映画鑑賞に加えて、映画の上映権利を買って主に大学祭で上映すること、上映会のゲストとして研究者を呼ぶ活動を行っています。

 また映画祭に足を運ぶというのも活動の1つとして行っています。昨年は、東京フィルメックス*に招待枠として参加しました。どの活動にも「学生らしく、だけど面白いことをやろう」という組織のモットーがあります。

*東京フィルメックス 独創的な作品について、アジアを中心とした世界から集めた国際映画祭。映画文化の未来を大切にする目標を掲げている。
(参照)東京フィルメックスHP:https://filmex.jp/2020/

・私自身映画研究会というと、自主映画を創るというイメージがあったので、多岐に渡る活動で驚きました。

 かつて広島大学映画研究会でも自主制作を作ることをおこなっていました。ただ、サークルの部員不足に悩まされ、過去に3回程、廃部の危機に晒されています。私自身は、2017年にこの映画研究会に入ったのですが、その時も実質廃部状態でした。活動内容を変えた今も人員不足、後継者不足には常に悩まされています。

 

・先程、当初廃部状態だったとお聞きしましたが、どのような経緯で所属、再建となったのでしょうか?

 見つけた映画研究会がサークルを取り纏めている団体(広島大学文化サークル連合)の当時の代表の人と知り合った際に「映画研究会に入りたい。」という話をしました。その代表者である先輩も映画研究会の人と引継ぎの連絡が取れなくて困っているという話でした。なので、最初は映画研究会の先輩を探すことから始めました。当時の活動場所は見つかったのですが、もぬけの殻で、また、映画研究会の先輩もやる気がないのか連絡を無視したのです。なので、私が1年生ですが、再建すると共に代表になりました。そこから、まずは映画を鑑賞するという部分から始めました。

 

・小城さんが映画研究会に入ったきっかけや理由はありますか?

 簡単に言うと、映画が好きだったからです。中学高校と寮生活を送り携帯電話、スマホが使えない、ゲーム、パソコン禁止と規則が厳しい学校に通っていました。娯楽があまりなかった学生時代に近所にあったのがたまたま映画館で、そこで映画にハマりました。高校時代は年間300本見ていたと思います。

 

・現在、コロナ禍という状況になったことで、サークル活動が行うことが出来ていない、授業もオンラインになってしまうなどの話を聞いたりしますが、広島大学ではサークル活動は行えていますか?やはり変化はありましたか?

 昨年4月、緊急事態宣言が発令されてから3ヵ月程、サークル活動は一度止まってしまいました。大学から提示された再開条件が顧問を新たにつけるとこと、細かい規則書類を製作するということでしたが、中々難しい部分も多く、多くのサークルにとって再開にはまだまだ困難な状態が続いています。現在は、学生課に対して自治的な再開を許してくれという要望及び学内交渉を行うこと、あとはオンラインも学外での活動が中心になっています。

 オンラインとしては、企画、運営することを行いました。例えば、有名な映画監督である想田和弘さんをお招きして対談を行ったり、東京新聞社記者の望月衣塑子さんを招いたりしました。また、広島大学は大学祭が中止となってしまったのですが、当初予定されていた日に3時間、映画研究会は2000年代のアニメーションはどのような変遷を辿ってきたのかということを考察する為、京都アニメーション作品の分析を軸にしてオンラインシンポジウムを行いました。

*想田和弘 ドキュメンタリー監督。代表作に『選挙』がある。現在公開中の映画『精神0』がベルリン国際映画祭エキュメニカル審査員賞、ナント三大陸映画祭グランプリを受賞。
*望月衣塑子 新聞記者。2019年映画化、日本アカデミー賞最優秀作品賞、第74回毎日映画コンクール等多くの賞を受賞した『新聞記者』の原作者。

 

 

(写真)広島大学映画研究会の活動の様子

・元々「好き」であった映画の知識はどのように広げていったのでしょうか?

 軸は、やはり元々映画が好きだったということですが、芸術文化が愛好されている都市・広島で過ごしてきたのも大きいと思います。2018年まで広島国際映画祭が貴重なフランス映画を上映する企画を積極的に行ったこともあり、このことに影響されてフランス映画を本国から買い付けて上映するという企画を行うことが多いです。私自身、映画研究会としてだけではなく、映画研究者の端くれとしても活動していますが、フランスのジャン・リュック・ゴダールを主な研究対象とする映画研究者との出会いのように、映画祭で出会う映画研究者の人の繋がりを始まりに人脈が更に広がっていきました。そういった人脈を活用して、広島で映画上映を行う、ゲストとして知り合った先生をお招きするなど、人の繋がりにより活動が広まっていきました。

*広島国際映画祭 「ポジティブな力を持つ作品を、世界から集めた映画祭」というテーマを掲げた映画祭。映画祭を通して、有能な若手監督を発見し、広島で出会いをつくっている。
(参照)広島国際映画祭HP:http://hiff.jp/
*ジャン・リュック・ゴダール フランスの映画監督。代表作に『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』『軽蔑』などがある。作品において独創的で大胆な表現を生み出したことで知られる。

映画「突然失礼致します!」について

 

ここからは、小城さんが携わった映画「突然失礼致します!」についてのお話について伺います。

映画『突然失礼致します!』とは
A_JAPARATION_FILMによる全国の大学生によるオムニバス映画。2020年、新型コロナウイルス感染拡大した社会。そこでテーマは「希望」と設定する。1分以内の映像作品を全国から募集した。120以上の大学や団体が参加、総勢180作品にも及ぶ長編オムニバス映画作品。
→(参照)『突然失礼致します!』HP:https://a.japaration.jp/
→政策委員会代表、熊谷宏彰さんのインタビュー記事:https://gakusei-kichi.com/?p=51186

 

・連絡を受けた時の反応などはどうでしたか?

 実は、初期の計画の段階から熊谷さんの方からお話を受けていました。繋がりとしては、武蔵野大学の方から最初、全国の大学にある、映画研究会のオンライン交流会のお話を受けた形になります。お話を聞いて、コロナで様々な活動が止まっていたこともあり、すぐに参加を決意しました。

 

・実際、企画運営とは実際どのような役割を担っていたのでしょうか?

 例えば、 劇場公開や著作権関係などの事務的な部分を担当、全国の映画「突然失礼致します!」に関わっている大学生との議論に介在する役割を行ってきました。劇場公開に関しては、基本的に群馬県での上映以外は全て関わっています。劇場公開に際して、劇場のスタッフとの連絡を行い、またはゲストを呼ぶ交渉など行っていました。

 

・製作委員会代表である熊谷さんの印象などお持ちでしたら教えて下さい。

 素直に凄いなと思います。なぜなら人脈を使って全国の大学生を集めるほか、YouTube公開やSNSを活用してクラウドファンディングを目標額以上達成させるなど、私がこれまで考えてこなかったことを精力的に行ってきたからです。簡単には出来ないことを彼は達成させていて、感心させられました。

 また、熊谷くんと私自身の違いとして、彼は映画を楽しんでいるけれど、僕は映画を苦しいものであると思っていることです。私は、サークルとして映画に関わっているだけでなく映画研究をしているので、研究対象として映画を観ている部分があります。しかし、熊谷くんはただ純粋に映画を楽しんでいると言えるでしょう。私ももう少し楽しみながら作品を観られるようになりたいなと少し思うこともあります。

 

・この企画に参加してみて、小城さんが考えたこと、感じたこと、変化があれば教えて下さい。

 この映画のテーマに関しては「希望」ではなく「告発」ではないのかという持論を持っています。例えば、大学の現状を示すのであるならば、5人に1人が退学を考えている学生がいる、学費が高すぎて奨学金が無いと大学に通えないなどといった困難が生じることが現状として挙げられます。サークルに関しても広島大学が行ったアンケートでは学部生のレベルは3人に1人が、課外活動が無いことへの不安を示していることが明らかになりました。そんな中で、映画『突然失礼致します!』は大学生の実態を描いていると思います。

 イタリアの思想家であるジョルジョ・アガンベンは2020年3月に記した『エビデミックの発明』という論考で、人々に課される「移動の禁止」の中に外での文化的な集い、すなわち人々の同一空間での社会的交流が、権力によって禁止されることへの危機感を示しています。このことを今考えるならば、コロナ禍の対策の1つに挙げられる「密を避ける」ということは、公の部分である授業やサークル活動、あるいは友人との飲み会といった社会的空間における人との繋がりが、強制的に遮断されていることを表していることと同義であると言えます。本作品ではカーテンや窓を開ける描写が多く出てきますが、それは外に出たいという衝動の現れであると考えることができるでしょう。この映画ではコロナ禍における大学生の現状を訴えたいという「告発」の描写が見られ、私自身は「希望」の裏返しとして「抵抗」の「告発」を「希望」として捉えたいという思いがあります。

*ジョルジョ・アガンベン イタリアの哲学者。美学者として活動を始め、近年は政治哲学の研究に集中している。著作として『到来する共同体』『ホモ・サケル―主権権力とむき出しの生―』などがある。

・今後、コロナ禍がまだ続く状況ではありますが、サークル活動として、今後の目標がありましたら教えて頂けますか?

 今後も引き続き面白い企画を練っていこうと考えています。また、私自身としては、映画の鑑賞本数を下げずに作品を観ていきたい、映画研究に取り組みたいという思いがあります。

 

ありがとうございました!

 

編集後記
 元々、人員不足から廃部状態だった映画研究会を再建した小城さん。2020年はコロナ禍の猛威により、活動の幅にも多大な影響を受けました。
 ガクセイ基地には「好きを見つけよう」というキャッチコピーがあります。小城さん自身、映画研究会に入ったきっかけ、映画研究を行おうと決めたのは、映画が好きだったからだとお話ししてくれました。「好き」を見つけ、深めることの重要性、そこに伴う人との出会いや繋がりを大切にしながら広めていったからこそ、現在のコロナ禍においてもオンラインで活発な働きがけを実現することが可能になったのではないかと思いました。私自身、映画が好きな人として、映画研究をサークル活動と同時に行う小城さんの話は、とても刺激され、勉強になりました。

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