日本では、障害を持つパフォーマーが表舞台に立つと「障害者を見せ物にするのか!」という批判が上がり、メディアはこぞって自粛ムードを取るようになった。そのため障害という特性を持つパフォーマーが福祉・教育・チャリティーの枠を越えてフラットに活躍出来る場が少ない。パフォーマー自分の芸に誇りを持ち、客を笑わせて感動させているのだ。活躍を希望する彼らのチャンスを奪っているのにかかわらず自粛ムードは続く。一体何のため、誰のための自粛なのだろうか?
障害の有無に関わらず活躍できる場をすべての人に。その思いで一般社団法人Get in touchは2017年に一夜限りのエンターテインメントショー「月夜のからくりハウス~平成まぜこぜ一座~」を企画した。
公式HP
Get in touch. Let’s まぜこぜ!~私がかわる。あなたが変わる。みんなが変わる。社会が変わる~
今回はその月夜のからくりハウスに出演している劇団人の森ケチャップ・寺床圭朔さんのインタビューをお届けします。
劇団人の森ケチャップ
「障がい者と健常者が一緒につくる・みる・あつまる舞台づくり」を目的とし、
障がい者への理解や協力、芸術性の追求よりも、つくって・みて・あつまった人が、
それぞれの視点で「よかった!!!」と思える瞬間のために舞台を務める演劇・パフォーマンス集団。
―活動内容を教えてください。
1年か2年に一回のペースで、脚本から音楽・衣装などすべてを自分たちで作り上げる音楽劇をしています。音楽劇っていうのはミュージカルとも少し違って、インド映画みたいにストーリーはセリフがメインで進んでいくんだけど、ところどころに歌とダンスが入るスタイルです。
メインは音楽劇なんですけど、年に4~5回くらいお祭りとかイベントとかでパフォーマンスをさせてもらう機会があります。
―今は何人くらいで活動しているのですか?
えっと…中心で活動しているのは10人くらいかな…?うちはくるもの拒まずって感じで常に人数が変動しているので、正確にはちょっとわかんないですね(笑)あと、全員が必ず公演に出るわけではないんです。公演の機会がある度に「次の出る人―」って聞く感じですね。なので、参加している人全体でいったら30人くらいになるのかな。
―団員にはどんな方がいるのですか?
今はダウン症の人が多いです。
人の森ケチャップは、座長が「せっかく劇団を立ち上げてなにかやるなら発達障害の有無とか関係なくごちゃまぜでやりたいね」っていうコンセプトで作りました。活動に参加している座長の弟さんがダウン症なんですけど、そのコミュニティからつながりが広がっているので、今はそんな感じですね。でも車椅子の人がいたり、どんな人かは参加するに関係ないですね。
―劇団に参加するのに条件などはありますか?
やりたい!って思ってくれている人なら基本的にはみんなウェルカムです。ただ、劇団の活動のために割く時間がそれなりにあることと、衣装や小道具を全部自分たちで作っていることもあるので、そこはご了承の上で参加していただきたいです。
―衣装がすごく工夫が凝らされていてお洒落だなぁ可愛いなぁと思って見ていました。この衣装をすべて自分たちで作っているのすごいですね…!
そうなんです!衣装にはこだわっているんです!作るのは大変なんですけど、楽しいですよ!
もともとあるものをそのまま使うのではなく、何か別なものから作ることにしているんです。例えばこの眼鏡も針金から作っていまし、お菓子の空き箱を帽子の一部にしたり、100円均一で売っている玄関マットを加工して衣装の一部にしたり。服もそのまま着るのではなく、たくさんの服をつぎはぎにして新しい衣装にしています。
―いろんな人が参加されている劇団 人の森ケチャップは何を目指して活動しているのですか?
僕たちは、障害者の前にあるバリアをなくそうとはあまり思っていません。
バリアとか大変なことがあるのは健常者も障害者も一緒だと思うし、なくなることってないと思うんですよ。だから、バリアをなくすというよりは一緒に乗り越えたい。生活の中にそれが「ある」という前提で、それをどうやったら解決できるか、どう乗り越えようかをみんなで考えれたらいいなと思っています。
―寺床さんが人の森ケチャップに入ったきっかけは?
僕もともと高校の時に演劇部だったんですけど、その時の先輩が劇団の立ち上げメンバーなんです。で、人の森ケチャップは音楽も自分たちで作っているので、音楽ができる人を探していて…。たまたま僕がギターをやっていて曲を作ったりとかしてたので、その立ち上げメンバーの先輩に誘われた感じですね。最初は音楽担当の裏方として入ったんですけど気がついたら舞台に出てました(笑)
―寺床さんが人の森ケチャップで活動を続ける原動力は?
やっぱり楽しいってことですね。観てくれた人がその時間を楽しく過ごしてくれることと、劇団の活動をする中でいろいろなつながりが生まれて広がっていくのがのが嬉しいし楽しいです。
―人の森ケチャップとGet in touchとの出会いは?
僕たちが、NHKの「バリバラ」という番組が開催しているバリアフリーファッションショー「バリコレ」に出演したときにGet in touchはちょうど月夜のからくりハウスの構想を考えている時だったんです。それで理事長の東ちづるさんが声をかけてくれたのがきっかけですね。そこから月夜のからくりハウスに出演したり、レインボーパレードに一緒に参加したりしています。
―寺床さんにとってGet in touchはどんな団体ですか?
一緒に色々なことをしていて心地いいところです。皆さんそれぞれプロの方が自分の得意なことを生かして活動されているのでフォローのしあいがとてもうまいんです。あと皆さん本当にフットワークが軽くて。
―今の日本だと障害を持っているパフォーマーの方がフラットに活躍できる機会が少ないことについてどう思いますか?
やっぱり「障害者」っていう概念に対してまだ悪いイメージが強いんですよね。パフォーマンスを笑っていいのか、楽しんでいいのか勘ぐってしまうところがあると思うんです。でも面白いことは面白いと言っていい。そこに健常者と障害者っていうフィルターはいらないんです。この現状を一遍に変える方法は多分ないので、僕たちがいろんなところでパフォーマンスをする、みたいな地道な活動を通して少しずつ変わっていくしかないのかなと思います。
―今後どんな舞台を作りたいですか?
演劇はお客さんの想像があって初めて完成するんです。例えば演者が空のコップで何かを飲むジェスチャーをしたとします。演者がやっていることは「飲む」という演技だけど、お客さんが話の流れとかから色々なことを想像して「コップでワインを飲んだ」と思う。僕たちが意図していたものとお客さんが受け取ったことが違ったとしても、僕たちのパフォーマンスから何かを感じてその人なりに色々考えてくれたらうれしいですね。その結果、やっている人も見ている人もあつまった人も「良かった」と思える、そんな時間を共有できる舞台を作りたいです。
―ありがとうございました。
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