今回はKIBIという慶應大学の学生が主体となっている勉強会に参加させていただくことができました。しかし、勉強会と一口に言っても形は様々。今回は、①少人数である、②社会人ゲストをお招きしているなどの特徴を持つKIBIについて、参加して感じたことと運営側の狙いや考え方という2つの視点から書いていこうと思います。
最初に断っておきますが、勉強会とはいうものの、いかにも1日何時間も勉強してテストで高得点を取りそうな人が、大量の課題をこなして参加しているというものではありません。気軽に読み進めてみてください!
目次
参加者として
僕自身1回ではありますがKIBIに参加させていただきました。4月19日に、慶應大学の日吉キャンパスで行われた勉強会に参加し、合計2時間ほど、今回は「紙ゴミ」についてプレゼンテーションを聞いたり、ディスカッションをしたりしました。今回は学生のみならず、社会人の方もゲストとしていらっしゃっており、貴重なお話をいただくこともできました。
まずはこの会の大まかな構成を書きます。
①プレゼンテーション
一体紙ゴミが世界でどのくらい環境に影響を与えているのか、日本は紙をどのくらい使用しているのかなどについて学生のプレゼンテーションを聞きました。あくまで、今回の問題を考える上での基礎をシェアするためのプレゼンです。
②質疑応答
直前のプレゼンテーションについての質疑応答がありました。質疑応答には社会人ゲストの方も混ざり、専門知識をもとに質問に対して何らかのフィードバックを頂いたりすることもでき、非常に充実した場となりました。
③Anotherプレゼンテーション
最初のプレゼンテーションは、あくまで世界の中でどれだけ紙ゴミが出ているのか、紙の廃棄によって環境にどのような影響が出ているのかといった大局的で、幾分か自分たちの実際の生活から離れたプレゼントなっていました。対照的にこちらは、自分たちの実体験に基づいたプレゼンテーションでした。具体的には、新歓の際にビラをたくさん配ったのはいいものの、無駄が多くリサイクルのために回収するのが難しいということなどを具体的に説明してくれました。さらに、紙を使わない宣伝ということでAirDropも使ったが成果が極めて乏しかった、ということも発表され、この後の議論の土台となりました。
④グループディスカッション
ここから先は、5人ほどのグループ2つに分かれてのディスカッションとなりました。基本的には紙を無駄にしないでどのように宣伝を行うのかというところにフォーカスすることになっていました。しかし、どちらのグループにも社会人ゲストの方がいらっしゃったので、なぜそもそも紙必要とされるのかといった根源的な問いなど、様々な観点から独自の議論が芽生えることとなり、この時間も非常に面白いものとなりました。
参加してみての印象
まず感じたのは、少人数で学びの場を形成することの良さでした。大学の授業には、数十人で受けるものが多くありますが、それらの授業だとどうしても意見を言わずに漫然と聞いてしまいがちです。全体で10名強、しかも社会人の方2名(環境系の専門家も含む)がいる中で緊張感を持ってディスカッションやプレゼンテーションを行うことは、否が応でもアクティブに学ぶ姿勢を作ってくれるものでした。
一方で参加する中で感じたことの1つは、社会人ゲストの方の知見をどのようにディスカッションで活かしていただくかということの難しさでした。ディスカッションなどでは、彼らゲスト陣の経験と知識が学生と比べて圧倒的であるため、どうしても対等な知識を持つもの同士が互いから学び合うという形式になっていないと感じられました(もちろん学生側にも社会人ゲストの方にも非はないのですが)。これについては運営されている方も思うところがあったようですので、下のインタビュースクリプトで詳しく書いています。
主催者の方へのインタビュー
−KIBIを始めようと思ったきっかけは何ですか?
自分がやりたいからというよりは、周囲の留学生が慶応に馴染めていない、せっかく日本に勉強しにきたのに勉強のためのディスカッションの機会に恵まれないと言っていたのが理由でした。授業で議論をすることもそこまで多くない、日本の学生は普段友人とあまり深い話をしない、そのような状況で学びが失われていくのは、彼らにとっても日本にとっても損害です。だからKIBIという場を作りました。
−KIBIのディスカッションが他のディスカッションと異なる点は何でしょうか?
参加者に違いがあると思います。実はディスカッションをメインにした授業を取ったこともあります。でも、その議論では各自の勉強不足が原因で深い部分までたどり着けない、または、勉強してきた人が多く話して周囲を圧倒してしまうことが多かったんです。でも、KIBIの参加者は日頃から社会問題に関心を持って考えを巡らせている人が考えを共有する場として議論を活用しています。今の所KIBIにおいては下調べが要求されることはありません。でも、それぞれが様々な活動や、勉強で頑張っているため、かなりのトピックについて質問を出して、興味をもって話せるという点は大きいと思います。
−KIBIを創る中で苦労した点などをお聞かせいただけませんか?
今まさに苦労しているところです。最初は、社会人の方を深く議論するためにお招きしていました。でも、社会人の方の知識というのはやはり圧倒的で、学生がお互いに学んできたことをアウトプットするというよりは社会人の方が一方的に話してしまうことになってしまいました。この状況をどうするのかということは今後の課題だと思います。せっかく社会人の方がきてくれるわけだから、やはり話を聞いてみたいとは誰でも思うものなのですが、でもそれだとディスカッションには辿り着かないんですよね。
−学生のみでディスカッションをしたということはあるのでしょうか?_
ありますよ。でも、参加者の数は減ってしまいますね。おそらく企業の方の話が聞きたくてKIBIにきている人は多くいるのでしょう。彼らにとっては学生のみのディスカッションはあまり魅力的に映らないのでしょうね。また、これまで学生のみで議論したときには、日本人がかなり多かったんですよね。そうすると、どうしても議論の収束点が、教育問題・日本文化といった部分に絞られてしまうのです。だからこそ、異なるバックグラウンドの持ち主として留学生を増やしたいと思っているところです。とはいえ、今現在自分の学びのアウトプットそのものに魅力を感じてもらえていないというところに課題があるとは思っています。
−KIBIは知的交流を通じて、参加者がどのような人間となることを望んでいるのでしょうか?
まずは社会的責任を一番に考えています。抽象的にいうなら、品格ということですね。特に日本社会に絞って考えると、ビジネスをやる上で事業利益のみに固執した場合、利益も生まれてこないし、国としてもおかしな方向に行ってしまいますよね。就活という企業側の価値観に従わなければならない状況に入る前に、ひとつ自分の中で社会的判断を下すための軸を持ってもらえればなあと思っています。更にいえば、日本人に限定されない、多角的な視野を持つ訓練としてもKIBIは有用だと思います。一つの問題は色々な国の視点から見ると色々な見方ができるわけで、そのような考え方は世界に通用するビジネスをする上で非常に重要だと思います。
−最後に、この記事を読んでいる方に一言いただけませんか?
KIBIが人を惹きつけることができる大きな要因は、社会人の存在だと思います。それも、ただの社会人ではなくて、役員のような本当に凄い方にも来ていただけているというのが強みです。でも、その方たちが来てくださるのは、僕らが何か凄いからではなくて、学生に対して何かをしてあげたいという意思をお持ちの方が多いからなんです。日本社会の一つのウィークポイントは、つながりのなさだと思うんですよね。人と人とが繋がることで新たな価値が生まれるような何かをもっとできたらなあと思っています。今現在、企業の求める人物像に大学生活の中でアプローチするのが非常に難しく、大学生のうちに企業側が何を考えているのかを知り、少しでも自分のキャリアのためにできることをやるのは非常に価値があることです。ぜひ、大学生という肩書きの特権的な部分を生かして、もっと企業の方と一緒に何かをやると良いのではないかと思います。
まとめ
今回、KIBIの参加者の方へ取材用のアンケートを取らせていただきましたが、この中でKIBIに参加するきっかけとしてはやはり、英語力向上や、社会人の方々との接触といったものが目立ちました。インタビューの部分を読んでいただいたことで、現在KIBIが取り組んでいる課題などもお分かりいただけていると思いますが、総じていうと、KIBIの魅力は以下のポイントに凝縮されると思います。
・英語を使う機会があること
・留学生・社会人といった普段の生活で触れ合う機会のない方々と触れ合う機会があること
・多様な仲間に出会えること
・社会情勢・ビジネス関係のトピックについて学びを深めることができること
これらだけを読むと一見「優等生の優等生による優等生のための勉強会」という感じがしますが、実際にはカジュアルで、非常に居心地の良い場となっていました。
サークル・授業以外にこういった場所があると、自分の頭と心に良い刺激が加わるかもしれません!気になった方は手近なところからでも「勉強会」という名前に拒絶反応を示さず、様々なものに顔を出してみても良いのではないかと思います!
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