小池さん(筆者)はサイパンと聞いたときにどのようなイメージがありましたか?
―私の父が社員旅行で行ったことがあり、話を聞いたところでは海のイメージが強いですね。
実はサイパンが人気の観光地として最も知られていたのが1990年代後半。当時こぞってサイパンへ行っていたのが、バブル世代と言われる現在の40代後半~50代前半の方々です。業務開始当初、10代、20代の若い方々にサイパンのイメージを聞くと、その印象の薄いことに危機感を覚えました。サイパンは平均気温が27度で365日暖かい、まさに常夏の島ですが、同じく東京から3時間ほどで行ける沖縄は、冬は寒くて海に入れません(*)。日本が冬のシーズンでも海を楽しめるマリアナ。若い方々にはそんなことも案外知られていないんですよね。
*沖縄の海のシーズンは一般的に3月下旬~10月下旬と言われ、海開きが多いのも3月下旬か4月上旬。
また、手つかずの豊かな自然や、ダイバーを虜にする透明度の高い海をきちんと伝えたいという思いがあり、自然写真家の高砂淳二さんに撮影を依頼してマリアナ3島を撮って頂きました。「マリアナ、30の宝もの。」という企画の一環として、観光資料や公式サイト内に特別コンテンツを制作した他、クオリティの高い写真を旅行会社各社に無料で提供し、商品パンフレットで使用できるようにしています。様々な形で一般の方が見たときに、マリアナ本来の美しい自然がきちんと伝わるように心がけています。
国定海中公園にも指定されているマニャガハ島。ラムネ色の海はどこまでも透明で、スノーケルにもおすすめ。 ©Junji Takasago / MVA
見せ方を変えれば、見え方も変わり、一般のお客様に「こんなに綺麗な場所だとは知らなかったです」「3日でなら行ってみようかな」といった反応をいただくことが増えました。日本の南にある小さな南の島々。人口も少ないし、田舎ののどかな風景が残っているこのマリアナでのんびりした時間を過ごしたいという方々に魅力を感じてもらえるように工夫しています。
他にも、『マリアナジェニック』という企画を展開しています。自然だけではない、女子目線の「写真に収める価値があるもの」をPRしていくという視点で始めました。女性誌を中心に活躍されているカメラマンのMEGUMIさんにマリアナのインスタ映えをする場所・レストラン・海等をカメラに収めてもらい、観光局の公式Instagramやサイトで紹介しています。
ガラパンにあるおしゃれな「サンシャインカフェ」。カラフルな壁がキュート。 ©マリアナ政府観光局/MVA
同時に、観光客の方が撮った「マリアナジェニック」な写真をSNS投稿してもらうキャンペーンもスタート。この企画は、現地タクシーを利用してマリアナジェニックなスポットを巡るツアー商品造成に繋がるなど、拡がりも出始めています。紹介したポイントの一つに「青の教会」と私たちが呼んでいる小さな教会がサイパン島にあるのですが、外観がブルー一色でとても可愛らしいんです。空港から街中に移動するときに目に入るためか、その後インスタで似たような投稿が増えているのを見ると嬉しいですね。
撮影の際は、ローカル感を大切にしたかったので、日本人のモデルを起用するのではなく現地に暮らす、ごく普通の人たちをモデルに撮影してもらいました。その場所の空気感を感じてもらうには、そういったことも大事だと感じています。他にも、マリアナ観光大使として、現地の6歳の男の子をリアルキャラクターとして。「マリアナちゃん」という愛称で国内外のイベントに出演、マリアナのPR活動を手伝ってもらっています。
ニューオープンの「テニアン・オーシャンビュー・ホテル」。レモンイエローの外観がかわいい! ©マリアナ政府観光局/MVA
テニアン島のブロードウェイはまっすぐに続く島のメインストリート。ウェルカムボードが♡ ©マリアナ政府観光局/MVA
人口5万人ほどのサイパン島では、観光が一大産業です。地元の理解や協力がなければ継続的な発展は難しい。だからこそ地元の人々を巻き込んだ企画にしたいと考えていました。現地で募集をかけオーディションを行い、選ばれたのはまさに普通のローカルの男の子。それでプロモーションになるの?と心配されましたが、どのイベントにでても「かわいい♡」とマリアナちゃんが一番の人気者です。マリアナに暮らす人ってどんな人だろう?って案外、ピンとこないもの。どういう人が暮らしているのか、ローカルの人々をPRやプロモーションに織り込むことで少しずつ、親近感や空気感を感じてもらえたらと思います。
3ページ:インスタ映えスポットとは?
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