2.安倍首相とオバマ大統領のピンポン慰霊
▲ 2016年12月28日BBC
犠牲になった兵士たちの名が刻まれた壁の前で追悼する安倍首相とオバマ大統領
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2016年4月のケリー米国務長官や5月のオバマ大統領の広島訪問を受け、それに応じるかたちとして安倍首相も米国の真珠湾を訪ねた。日本の首相がアリゾナ号の沈没記念碑を訪ねたのは歴代初めてのことである。
安倍首相とオバマ大統領は両方ともスピーチでは犠牲者たちへの哀悼の気持ちを表したが、核心となる「謝罪」に関しては触れていない。
❖ 訪米の背景
まず、今回の安倍首相の訪米やオバマ大統領の来日のやり取りの背景は東北アジアの情勢と深く関係している。特に2016年相次いだ北朝鮮の第4、5次核実験の影響が大きかった。第5次まで核実験が行われたということは核弾頭の高度化を意味し、国際的にも警戒が強まる。その警戒の一環として米国はアジアで軍事的友邦國である日本との同盟を深めようと目論んだのである。同盟強化のアクションとしてまず米国はケリー国務長官を日本に派遣し、米国国民の反応を伺った。(これは日本の首相がまだ真珠湾攻撃に謝罪を表明していない段階で米国の代表が広島を追悼することは支持率によくない影響を及ぼす恐れがあったためのこと。)そのあと、ようやくオバマ大統領が来日、広島訪問が叶った。ケリー国務長官のときと同じく、広島原爆攻撃について公式的な謝罪は表明しなかったものの、間接的な謝罪・慰霊の表現で海外からも好評を受け、無事終了。そして、オバマ大統領の広島訪問は安倍首相の真珠湾訪問が外交的前提だったため、今回は安倍首相が米国を訪問したのである。ちなみに今回の訪米は、日米軍事協力に対しネガティブな態度をとってきたトランプ氏が次期大統領になった時点で、今後とも日米軍事協力に揺るぎはないというアピールも含まれているとみられる。
❖ 仲良し日米? 譲りのない give and take
国際的にも仲良しと呼ばれている日米同盟。しかしピンポン慰霊にも徹底した外交的計算が覗かれる。両国の親密関係が深まったことや北朝鮮を警戒するのは無論、一応両方とも国の代表として「初めて」広島や真珠湾を訪問したという外交的実績を上げた。しかしながらも、謝罪の意は示していない。米国は「攻撃してきたのは日本側。日本が真珠湾攻撃をあやまらないかぎりでは米国から広島原爆に関して謝罪できない。」という立場で、日本は2回にかける原爆攻撃による莫大な被害について謝ってほしいわけである。つまり、今回のピンポン慰霊はオバマ大統領と安倍首相が個人の政治的成果は上げ、防衛を硬くしつつも歴史的に敏感なところは触れずに済んだのである。
❖ 稲田防衛大臣の靖国参拝のタイミング
安倍首相が真珠湾を訪問した翌日、稲田防衛大臣が靖国神社に参拝に行ったことが話題になった。海外で日本の政治家の公式靖国参拝はナショナリズムの動きと批判されることが多いが、首相が「平和」のメッセージを唱えているこの時期に稲田大臣の参拝は、外信から「両面的、面裏が違う」とも言われた。これに関して、稲田大臣は「最も激烈に戦った日本とアメリカが、今やもっとも強い同盟関係にあるなど、未来志向に立って、しっかり日本と世界平和を築いていきたいという思いで参拝した。」そして「祖国のために命を捧げた方々に対し、感謝と敬意と追悼の意を表すことは、どの国でも理解しいただけると考えている」と説明している。安倍首相は稲田大臣の靖国参拝についてノーコメントで一貫した。
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