2018年9月11日現在、私は南アフリカ共和国のケープタウンからこの記事を書いています。まだ大学の夏休み中なので主に観光を楽しんでいます。南アフリカは公用語がいくつもありますが、その中でも多く話されているのが英語とアフリカーンス語です。ただ、アメリカ英語やイギリス英語などのアクセントと異なり、アフリカーンス語の影響で独特のアクセントの英語を話す人が多いです。
ケープタウンにはほぼ9月いっぱい滞在する予定ですが、早くも到着して1週間目から日本人と話す機会がありました。その方の人柄は本当に尊敬でき、将来がますます楽しみな方なのですが、1つだけ気になったことがありました。それは、「1年でそんなに英語話せるようになったの?」という発言でした。何気なく言った誉め言葉だとは分かっていても、似たような発言をよく耳にする私は正直心の中で、「またか。」と思いました。
というのも、私のバックグラウンドを勝手に紹介させていただくと、日本で生まれ19年間は日本国内で育ちました。海外旅行などで短期に海外へ渡航することはあれど、家族と共に海外移住はしたことはありません。小・中・高と12年間田舎の公立の学校に通いました。日本の私大へ1年行った後、半年の休学を経て2017年10月からポーランドの大学へ正規生として入学しました。何度も聞かれたことがあるのであらかじめお伝えすると、読者の多数の皆さんと同じように英語は中学1年生から教科として勉強し始めました。
本題に入ります。なぜ私が、「ポーランドに住んでるから話せるようになったんだ!」、「アメリカかどこか海外に住んでたの?」、「1年でそんなに話せるようになったの?」、「ハーフなの?」などの発言や質問に少し苛立ちを覚えてしまうのか。
目次
~海外に住む=自動的に英語が身に着く?~
まず、ポーランドでは英語とは全く異なるポーランド語が公用語である為、私自身にとってもポーランド人にとっても英語は基本的に外国語です。大学では英語“で”専攻を学んでいるため、英語“を”学びにポーランドに来たわけではありません。大学で講義やディスカッションを英語で行っていかなければならない為、大学入学前から既に英語は身に着けている必要があるというのが個人的な考えです。
アメリカに住めば誰でも最終的には英語が話せるようになるのか。この問いに対する答えは間違いなくNOです。とあるアメリカ在住の日本人ユーチューバーさんが、アメリカは日本人も多く、英語なしで生活しようと思えば十分できてしまうという趣旨の発言をされていました。
私はポーランドに1年住んで少しでもポーランド語で会話ができるようになったかといえば、全くもってそんなことはありません。未だほぼ挨拶程度しかできず、数字も1と2しか分かりません。
正直、ポーランドへ住み始める前は、「そこまで勉強を頑張らなくても、ポーランドではほぼポーランド語しか使わないであろうから1年後には日常会話レベルなら話せるようになっていることだろう」と甘い考えを持っていました。
実際、英語とジェスチャーでなんとかなってしまうので、努力を怠れば、現地語を使わずに生活可能なわけです。このことはポーランドだけでなく他の多くの国でも同じことが言えると思います。
~なぜ外国人労働者は日本語が上手なのか~
8月、日本に一時帰国した際、驚いたのが外国人労働者の多さです。特に東京では毎日2~3回はコンビニエンスストアへ行っていたと思いますが、日本人の店員さんは3人ほどしか記憶にありません。
彼ら、彼女らの流暢な敬語、素早く丁寧な接客サービス、素敵な笑顔は忘れられません。
もしかすると彼ら、彼女らの日本語の上手さを知っているからこそ、海外に行けば英語が話せるようになると一概に思ってしまう人もいるのかもしれません。
再度強調しますが、日本に住む=日本語が話せるようになる、という方程式は存在しません。
日本語が流暢な外国人労働者も働きながら、勉強しながら、もちろん現場で実践しながら日本語を習得していったはずです。もしくは、日本に来る前に母国で勉強し、日本語をある程度自分のものにしてから日本へ渡ってきた人もいるはずです。
~使えるものを有効に使っている・使ったかが鍵~
ガクセイ基地を拝読してくださっている方の平均年齢は割と若いと思いますが、私たちの世代は幼い頃から、もしくは生まれた時からスマートフォン、インターネット、パソコン、動画サイトなどが身近にあったはずです。
今は高いお金を払わなくともスカイプ等を使ってオンライン英会話をすることもでき、動画サイトで外国語に触れることがいくらでもできます。
海外に住んでいなくとも、外国語を学ぶ方法は無限にあります。また、学校でもALT(Assistant Language Teacher)という主に日本国外から来る英語の先生と話す機会を作ることができます。
満場一致で同意してはもらえないでしょうが、英語を、外国語を習得することは恋愛と通ずる部分があると思いました。恋人、パートナーは自動的にできるものではないはずです。何もせずに待っていても大抵の場合、映画のようにあんなことやこんなことは起こりません。
言語を習得する時も、努力とアウトプットが大切で、主体的にアクションを起こしていかなければ一生話せるようにはならないでしょう。
~先輩から?アドバイス~
言語はコミュニケーションのツールの1つなので、誰にでもやり方次第で習得可能です。私たちは生まれた時から日本語が話せたわけではなく、周りの人が言っていることを聞いて、何度も間違えながら真似をして話せるようになったはずです。
学び始めは何度も間違えて、恥ずかしい、悔しい、格好悪い、と思うかもしれませんが、仕方ないです。それでいいんです。それが当たり前です。日本語ネイティブではない方が一生懸命日本語を学ぼうとしている姿勢は健気に映るのではないでしょうか。
英語の勉強方法について1つだけアドバイスさせていただくと、これから英語を勉強していく上で、様々なアクセントに慣れていくと良いのではないかと考えます。
日本の学校でよく使われているのはアメリカ英語、カナダ英語、イギリス英語のいわゆる標準的で綺麗な発音が多いと思います。
ただ、世界に一歩でると、ネイティブでも、シンガポール英語、インド英語、アイルランド英語、南アフリカ英語などがあり、更に英語を母国語としない人も含めると“英語”と一括りにしても、本当に1人ひとり違ったアクセントを持っています。
私にも私のアクセントがあり、特に日本語ではあまり区別しないRとLの発音を意識していないと、聞き手に混同を与えます。
この世界中の様々なアクセントに慣れるために、標準的で綺麗な発音と言われる英語だけではなく、異なった英語のアクセントに普段から触れるようにしていると将来コミュニケーションがしやすくなるのではないかなと思っています。
私自身もポーランドに来てからポーランド語訛りだけではなく、トルコ訛りやロシア訛りなどのアクセントをよく聞くようになり、リスニング力が更に鍛えられたと思います。
これから先も英語だけでなく色々な言語を操る人で出会う機会があるはずです。ここまで読んでくださった皆さんには是非「〇〇に住んでいたから話せるのか」と思うのではなく、その方がその日までしてきた努力をまずは考えて欲しいなと思います。
せっかく南アフリカに来ているので、あの有名なネルソン・マンデラ氏の名言で締めくくります。
It always seems impossible until it’s done.
(達成するまで、それは不可能に見える)