メディア/デザイン

【インタビュー】Webメディア「さいのネ」運営者に聞く 埼玉発・等身大の豊かさ/菊村夏水さん

皆さんこんにちは〜!ガクセイ基地のまなみです🗾

突然ですが、”ローカルWebメディア”というものをご存知でしょうか。ローカルWebメディアでは、地域のニュースや、生活に密着した記事がホームページやSNSに掲載されています。

いわゆる「フリーペーパー」的なもののネット版か〜と思っていたのですが、ある日私は「さいのネ」に辿り着きました。

”埼玉県・さいたま市”に特化しているWebメディア。その中で多く登場する”豊かさ”、”4つの根”という単語に惹かれる自分がいました。

埼玉県にもさいたま市にも特別な縁がある訳ではないけれど、何故か親近感を抱きたくなるし、記事やInstagramの投稿に、不思議だけれど人の体温みたいな温かさを感じる。

これは是非お話を伺いたいと思い、「さいのネ」の運営者である菊村夏水さんに取材を行いました!

では早速!

菊村 夏水
1993年生 さいたま市在住
2017年よりフォトグラファーとしての活動を開始。主な撮影ジャンルは人物で法人や個人事業主を中心に撮影。2023年1月より地元である旧浦和市を中心に活動している。

 

さいのネの紹介🌱
「豊かさを考える」ことをコンセプトとして掲げた、さいたま市のローカルWebメディア。
コンテンツを通して自身にとっての豊かさを考えたり、立ち止まって考える機会や場の提供を行っている。

 

さいのネ×うらみち 立ち上げまで

―本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、改めて夏水さんの自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

よろしくお願いします。菊村夏水と申します。
大学を卒業して、23歳のときからフリーランスのフォトグラファーとして活動しています。

フォトグラファーとしての活動を始めてから、しばらく都内に住んでいたのですが、4年前の2021年に地元である旧浦和市(現さいたま市)に戻ってきて「うらみち」という旧浦和市の魅力を発信するローカルWebメディアを始めました。

都内に住む前、地域にある個人店のBarでアルバイトをしていた経験がありまして、人口増加に伴う再開発が進むさいたま市で、苦しい状況に置かれている個人店を応援したい、自分が地元である旧浦和市のことをもっとちゃんと知りたいと思ったことがメディアを立ち上げたきっかけでしたね。

「うらみち」では旧浦和市、「さいのネ」ではさいたま市と、取材する地域の規模感が変化していますよね。「うらみち」から「さいのネ」というWebメディアの変化は、浦和が合併を経てさいたま市の一部になったことと同じような変化という印象を受けました。メディアとして扱う規模を広げるきっかけはあったのでしょうか。

そうですね。さいたま市は浦和市、与野市、大宮市、岩槻市が合併して出来た市なのですが、130万人以上の人が住んでいて、人口数が全国でも10番以内に入るんです。

浦和で育ち、与野にある高校に通い、大宮で遊ぶ機会が多かったので、さいたま市自体との関わりは深かったのですが、いきなり一人でその規模感で取材をするのは難しいと思いました。そのため、「うらみち」は取材範囲を育った街である旧浦和市に絞りました。

1年ほど、「うらみち」の活動を続ける中で新たなメディアを立ち上げようという想いに至ったのですが、今度は一人ではなく仲間を集めて運営しようと決めていたので、取材範囲をさいたま市に広げたんです。

地域コミュニティとしての「夜喫茶」

―以前「夜喫茶」を営業されていたと伺っています。とても幅広く活動されているなと感じましたが、夜喫茶を始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

南浦和駅の近くにある「喫茶むくむく」の店主さんと仲良くさせてもらっていまして。ある日、お店に訪れた時、営業していない空き時間を活用して何かやってみないかという話になったんです。

―そこで夜喫茶を?

はい。僕自身、これまでの人生の中で目標を定めそこに向かって、最短ルートで進んでいくことを大切にすることが多かったんです。でもそれでは、なんだか満たされないモヤモヤした気持ちが自分の中にあって。自分にとっての豊かさや大切にしたいことは何なのだろうかと、考えてみたくなったんです。

そんな時に一度立ち止まり、ゆったりとした時間を取った時に、初めて自分と向き合えた感覚があったんですよね。自分の「豊かさ」や大切にしたいことは、外ではなく自分の内にあると思えたんです。

でも現代社会では一人で考える時間を作ることはなかなか難しい。だからこそ、気兼ねなく「ひとり」の時間を過ごせる場を作りたいと思って『夜喫茶 モクモク』を始めました。

―お店はどのような雰囲気なんですか?

都内にはひとり時間に没頭できると感じるお店が何個かありまして。実際に行ってみると、それぞれが本を読むとか何かを学ぶことに没頭しに来ている雰囲気なんですよね。

そこに影響を受けて、表立ってお喋りは禁止していないけど、来てくださった方が黙々と作業をしたり、一人で考える時間を過ごせるような雰囲気を目指しました。

「さいのネ」の根幹・<4つの根>

―ここからかなり根幹の部分になる話に移っていけたらと思います。ここまでお話ししていただいた「豊かさ」や、さいのネというメディアが掲げる<4つの根>という言葉に込めた想いやこだわりを伺いたいです。

「豊かさを考える」というコンセプトを掲げているのですが、それは最終的に地域のことを一緒に考える仲間が増えて欲しいという想いからです。

―豊かさを考える。

それぞれが自分の豊かさを見つけて、自分らしく生きることで、余裕が生まれて……。それが結果的に地域や周りの人のことを考える、何か地域の人と一緒に作り上げていくという風になるんじゃないかと思っています。

でも、皆なかなか地域のことを考える余裕や時間がない。なので一緒に考える仲間を増やしたい。そのゴールから逆算したときに、自分に矢印を向ける、自分を満たす「豊かさ」が肝になると考えました。

―自分が満たされていないと、誰かに豊かさを分けられないという感じでしょうか。

はい。僕自身もそういう一面がありまして。余裕がないと、自分のことで手一杯になってしまうと思うんですよね。

戦後から高度経済成長にかけて多くの人が求めた物質的・経済的な豊かさは上を見ればキリがないし、一部の恵まれた人しか追い求められない場合が多く、途中で苦しくなってしまう。

だけれども、本来、豊かさはそれぞれの中にあると思うんです。そして、それは決して大それたものではない。だからこそ、<豊かさ>を考えることをメディアのコンセプトにしています。

―ありがとうございます。<4つの根>という言葉にはどのような想いが込められているのでしょうか。

まず<4つの根>の一つ目である「根を張る」というのは、メディアを通して地域や人を知り地域に関心を持ってもらうこと。

そして、二つ目の「根を繋ぐ」は、関心を持った人や場所に実際に足を運んでもらい直接繋がってもらうこと。

―地域の魅力を発信し、繋がりを生む。素敵な活動です。一般的にローカルメディアが担う役割はこの二つが多い気がします。残りの二つはどのようなものなのでしょうか。

三つ目には「草の根からつくる」というものを入れています。

地域に関することを行政にだけお任せせず、地域に住む人から取り組んでいくようなイメージですね。
例えば、地域にいる人同士で繋がって、お互いの困りごとを解決しあうだけでも十分地域をつくる活動だと思っています。

そして最後に「根をそだてる」という言葉を挙げています。木の根を育てる。これはもう自分の勝手な定義ですが、お互いの豊かさや考えを尊重し合える関係性が増えるということが根が育つことだなと。

―木の根……。もう少し深く伺いたいです。

地域を一つの木に例えたときに、根は見えない部分で、枝・葉・幹が見える部分だなと。さいたま市は、ここ数年、他の地域と比べて人口増加や経済発展してる一面があります。

その一方で行政と市民の距離が遠くなっていたり、地域の人同士の繋がりが希薄になっているように感じておりまして。目に見える部分は育っている印象ですが、目に見えない部分は逆に育っていない。

こうなると、例えば地震などの自然災害が起きたときにお互い助け合うか?となるとなかなか難しいなと感じていまして。そういう有事のとき、さらにいえば日常的に助け合える関係性がたくさんあることが、地域の<豊かさ>なのではないかと思っています。

〈根〉について更に言うと、この「さいのネ」というWebメディアが地域の根のような存在になりたいと思っています。

目に見える大きな影響はなくとも、結果的に緩やかに地域の人が繋がっていく。「なんか生活が豊かになってるよね」と感じるきっかけになる、そういうメディアになれたらいいなと思っています。

記事投稿に込める思い

―「さいのネ」の記事で扱うテーマや地域は、どのようにして決めていらっしゃいますか?さいたま市と一口に言っても、私が知っている以上に区とかいろいろある感じがして……

うらみちの活動を通じて、「自分の実体験をベースにしたい」と考えていると結局、僕自身の興味関心のある場所にしか行き着かないということに気が付きました。とっても素敵な眼鏡屋さんを見つけたとしても、僕は眼鏡をかけないので結局は行かないし……という。

―確かに。一人での投稿だと、無意識でもテーマや書くことが偏ってしまいそうですね。

そうですね。ですので、さいのネの書き手の方には自分の興味関心をベースにすることを大切にしていただいています。

🪴画像の記事はこちらから!

「さいのネ」の根が向かう先・大学生へのメッセージ

―ぜひ今後の展望を聞かせてください。

直近でいうと、書き手の方にある程度の金額をお支払いしつつきちんとメディアを運営していきたいです。

書き手の方自身の興味関心からコンテンツを作り、地域の人に喜んでもらい、余裕のある人が金銭的なサポートをしてくださる。地域の中でお金の良い循環を作っていくことは一つのテーマですね。

―「ガクセイ基地」は大学生向けのメディアなので、ぜひ大学生に向けたメッセージを頂けたらと思っています。

自分が欲しいなと思う場所を可能であれば、自分で作ったり、近しい活動をしている人のところで活動してみたりする経験は大切なのかなと考えています。

ただ、今言ったことを全否定する感じになりますが、「もっとこうしたらいいのに!」と思う場に属してみることも、長い人生において大切なのではないかと思います。

そこで過ごす中で、外からでは見えていなかった、その場の素晴らしさに気づく可能性があると思うんです。また、結果的に自分のやりたいことは何なのか、その解像度が上がることにもつながる可能性もありますね。

―その立場にならないとわからない、みたいな。

そうですね。今は調べれば、インターネット上でさまざまな情報を収集することが出来るのですが、それは断片的であったり事実とは異なることもある。本当に興味関心があることほど、自ら体験してみることが大切だと思います。

―ありがとうございました!

さいのネ 公式SNS

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<公式Facebook>

編集後記

石原愛珠/Ishihara Manami:メディアの力によって分断が生まれてしまう……その影響力の大きさに途方に暮れていた秋、「さいのネ」にちょうど出会いました。移民問題が広く取りざたされている中、思い出すのは関東大震災のときに起きた痛ましい惨劇。そして、そのヘイトは今も対象を変えてきっと誰かに注がれているんだと思います。私たちはそう簡単に変われなどしないから。でも、夏水さんや「さいのネ」が大切にしているマインドを多くの地域・人が共有すれば、地域の中の「知らない」から生まれる「暴力」は少しでも減らせるのではないか、みんながもっと大らかに、等身大で生きられるのではないかと考えています。そんな祈りを込めて、この後書きを書いています。改めて、夏水さんを始めとした「さいのネ」に携わる全ての方に心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます🪴

 

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