皆さんこんにちは〜!ガクセイ基地のまなみです🌿
今回は、仙台で香りを使った企業ブランディングを行う会社「グリーディー」の代表取締役である浜出理加さんにインタビューを行いました。
商品に込められたこだわりや地元の方々との繋がり、女性の働き方など様々な視点からお話を伺っています。ぜひ最後までご覧ください!
では早速!
目次
仙台で女性が活躍し、香りから幸せを届ける
―本日はよろしくお願いいたします!早速ですが、浜出さんの自己紹介をお願いいたします。
2017年に株式会社グリーディーを創業しました。それ以前は「ピーチ・ジョン」という女性の下着を扱う会社に長く務めていて、商品企画やマーケティング、お客様の対応など本当に多岐に渡る仕事をさせてもらいました。その中でも「今に繋がっているな」と感じるのは、通販で届ける荷物に香りのサシェを付けるというサービスです。
女性が下着をしまうときに一緒にサシェをしまって、その香りが薄まった頃には新しい下着を購入する。そうするとまた一緒にピーチ・ジョンの香りが届く、というもの。香りを無意識にブランディングに活用していたんだなと思いました。
―ありがとうございます。改めて、株式会社グリーディーはどのような会社なのでしょうか。
私たちグリーディーは『街を人を香りで幸せにする』ことを、事業を通して実現しようとする会社です。これまで、地域資源を活用したアロマ製品を中心に商品を展開していました。
その土地で「当たり前にあるもの」「通常なら廃棄されてしまうもの」を新しい価値に変え、地域のパートナーと連携しながら商品開発をしてきたのですが、2024年から化粧品製造業許可を取得し、化粧品の製造販売も可能になりました。
仙台市に分社とコンセプトショップがありますが、商品の製造は全て石巻にある工房で行っています。主に、「OEM商品」と呼ばれる企業から依頼されてオリジナルの商品の製造や、ホテルのエントランスの香りを作ったりしています。あとは、自社ブランドである「天然回帰」を展開しています。
―「グリーディー」という会社の名前の由来を知りたいです……!どんな想いを込められたのですか?
「greedy」は「強欲」「欲張り」という風に訳されることが多く、一見良くないイメージを持たれがちな単語です。
ただ、自分が前の会社で働いていたときに、周りにいる女性が結婚や出産でちいさく何かを諦めていると思えたんですよね。私自身も色んな経験を経て起業するときに、一つに絞ることが難しかったんです。そこで、何かもっと欲張りにやったら駄目なんだろうか?と開き直って、グリーディーという名前を付けました。
なので、会社の中でも「Be greedy―女性たちよ、貪欲であれ」と。会社に入ると、いろいろな変化があって「ちょっと駄目かも」と思うことがあるかもしれないけれど、そこを皆で諦めずに行こうね、という想いが裏側にあります。
―とても心に響きます。「街を、人を、香りで幸せに」というビジョンに込められた思いも併せてお聞きしたいです。
根本になっているのは、アロマやハーブ、そして私たちの感性でいろいろな課題に取り組んでいくということを考えています。
そしてもう一つ、2024年から「Think Globally、 Act Locally」という言葉を取り入れています。結構、地方で働く女性たちには思うような仕事が無いことや、男性の補佐的な仕事しか無いという課題があると思っていて。
ただ、例えば家族が宮城にいたり、結婚して嫁いだ先が地方だったりすることもある。そこで目指して行きたいのは、「自分の拠点となるところは地方だとしても、活動や目線は果てしなく外に向かう」というところで、小さく留まらないでねという想いでこの言葉を取り入れています。
―香りからいろいろな課題に取り組むという部分を、もう少し深掘りしたいです!浜出さんが持たれている課題感を知りたいというか。
「香りを使って企業のブランディングに繋げよう」と日々ご提案をさせていただいている中で感じるのですが、本当に今は情報が溢れていて、どんなに発信してもなかなか記憶に残らないということが起こっているんですね。
お客様が使うSNSや情報の仕入れ先も多様になっている、さぁどうしましょう?となったときに、先ほどお話しした前職でのサービスのことを紹介したりします。
今思うと、この(サシェの)サービスはあっても無くても商品自体に変わりはありません。ただ、サービスをなくしたときに「どうしてこの香りが無いんだろう?」と初めて気づかされたり。こんな風に、お客様の期待を超えるサービスとして香りが使えるはずと提案させていただき、ホテルメトロポリタン仙台や、ホテルメッツというJR東日本のグループが運営されているところを始めとした宿泊施設や商業施設でOEM商品を展開しています。
今の時代はいかに便利に、効率的に生活を営むのかというところが必要になっていますが、それが皆の幸せかと言うとそんなことは無いと思っていて。香りはなくてもいいものだけど、あると嬉しいし、生活が豊かになる。そういった風に考えていますね。
「香りを送る」アロマソルトレター
―私が株式会社グリーディーの存在を知ったのは、以前販売されていた「アロマソルトレター」がきっかけです。”香りを送る”ってとても画期的だなと思うのですが、どのようなきっかけで生まれた商品なのでしょうか。
元々この商品の前に、バスソルトを販売していました。不織布に入った出汁パックのような形のものが4個入りで3300円くらいする、結構値段が高めの商品で。よく、お客様から一つずつに分けて売ってほしいというリクエストを頂いていました。
以前紅茶を一包ずつパッケージに入れているという商品を見たことがあったので、「バスソルトでもできるじゃん!」と。まとめて買って渡すことも、はがきとして送ることもできるのでバスソルトとして広く知っていただけるなと思っていました。
―パッケージのイラストは、石巻の就労施設である「あっぷるぷらす」の子どもたちが描いたものと伺っています。どのような経緯があったのでしょうか。
元々うちの商品で、ナチュラルリードディフューザーというものがあって。毎年1.5tほど廃棄されてしまうブドウのツルを使って商品化したものです。このブドウの処理を、あっぷるぷらすさんにお願いすることになっていたんですね。
他にも、ラベルシールを張るといった単純作業を頼んでいました。あるとき、担当者が仕事をお願いするために現場に行ったところ、偶然彼ら彼女らが描いた絵を見て。それが本当に素敵な絵で、何かこの子たちの絵を使って面白いことをできないか、というアイディアが生まれました。
このアロマソルトレターがラベンダーとホップの二種類でしたので、その二つをイメージして自由に描いてみてほしいと生徒さんにお願いをしました。そこで完成したものをたくさん頂いて、その中から3人の子どもの作品を美術家・吉村尚子さんにコラージュしていただき、完成しました。
―「アロマソルトレター」の香りのうちの一つのラベンダー。香りを選んだ理由や、生産者の方との繋がりについて伺いたいです。
私たちの商品作りの根幹に「自然×想いの循環」というものがあります。その最初のきっかけになったのが雄勝ローズファクトリーガーデンです。
石巻の震災で津波に全部流されてしまった町で、徳水さんという方が「一面茶色になってしまった場所に、色が欲しい」とお花を植えたことからスタートしていて。ボランティアの方々の力で凄く立派なガーデンに、さらには地域の人たちの活性拠点にもなっているんですね。
そこでは、80歳を超えたおばあちゃんたちは皆「妖精さん」って呼ばれているんです!
―可愛い!
なので、80歳になるまでは皆「妖精見習い」と呼ばれていて(笑) 素敵だなぁと思いますね。そこで妖精さんが手作業で作ってくださったハーブを、エキスや精油にしています。
ラベンダーってどこでも香りとして使用されるものですが、「ラバンディン」という少しラベンダーよりもすっきりした品種を使った商品になっています。”癒し”というよりは、ストレスでガチガチになった呼吸を緩めてあげる……そこが、「解放」という名前にも繋がっているんです。
―もう一つの「ホップ」についてもぜひ伺いたいです。お酒のイメージが強いのですが、どのように製品化が進んでいったのでしょうか……?
石巻で、ホップの栽培からビールの醸造まで行っているイシノマキ・ファームの代表さんと元々知り合いで。ホップって、実はすごく睡眠に良い効果をもたらす成分があるんです。そこを何とか美容と掛け合わせて何かできないか、というアイディアが生まれました。
当時、バスソルトにラベンダーを配合することは決まっていたのですが、もう一個は決まっていなかったんですよ。お話を頂いたときに「それだ!」となってホップを配合することに決めました。
シャンプーから生み出す、日々の生活への癒しと余裕
―「アロマソルトレター」以外にも様々な香りに関係する商品がありますよね!他のおすすめの商品や、そのこだわりについて聞かせてください。
特に思い入れがあるのはシャンプーですね。首都圏で働いていたときに、とにかくいろいろと予定を詰め込んでいる、隙間が無い生活をしているという感覚があって。
寝る直前まで仕事でPCや携帯の画面を見ている……。本当は、食事の時間くらいはゆっくりすればいいのに、食べながらパソコンを操作している自分がいる。
当然ですが、自律神経が乱れていく生活をしていました。元々アロマは趣味でやっていたので、香りでならコントロールできると思ったんです。瞑想や座禅が良いと聞くけど、毎日そんな時間は確保できない。
でも、シャンプーは毎日できるし何よりスマホを見られないじゃないですか(笑) 湯船に浸かっているときは見られるかもしれないけど。
―本当だ?!どう頑張ってもスマホは無理ですね。
そのタイミングだけでも、いい香りを感じてほしいと本当に思っていて。”フレッシュハーブの香り”という風に呼んでいるのですが、杉やローズマリーをブレンドして、本当にすっきりする香りにしています。
これを使って、心からシャンプータイムを味わっていただいたらきっと癒されるはずだと信じています。
感性を活かし、クリエイティブに活躍できる働き方・生き方を
―女性×地方という掛け合わせは、どうしても働きにくいのでは?というイメージがあります。女性がクリエイティブに働く環境を作るにあたっての想いについて伺いたいです。
相当時代は変わってきましたが、まだまだ女性というだけで言われる部分はありますよね。ジェンダーギャップがある中でも、首都圏は選択肢や得られる情報が多い。そして、働いている女性が周りにいるから安心できる部分ってあると思うんです。
ただ、地方だと圧倒的に人が少ないですし、同じ企業でも業務内容が変わってくる。地方だとどうしても男性の補佐的な役割や、オペレーション業務がほとんどで、”東京で決まったものが下りてくる”という感じで……。
同じ業務をこなしているだけだと、いつの間にか人は変化したくないという気持ちや、「同じ会社なのに、東京で働いている女子とは違うんだ」というモヤモヤが内面化されてしまうということを凄く感じていました。
知り合いの女性から未だにお茶汲みをさせられるという話を聞いたり、石巻でジェンダーギャップについての取り組みをされている方が、「江戸時代ですか?」と聞きたくなるような実態が本当にあるとおっしゃっているのも聞いて。まだまだ地方では性別役割分業や、家長父制も根強いなと思っています。
―女性が生きにくい社会は、恐らく男性も生きづらいなと思っています。性別や学歴などのそういった要素に左右されることなく生きられる社会の実現のために、大学生世代はどのように考えることが大切でしょうか。
大きいことでも小さいことでも、自分の興味関心に引っかかったものは口にしてみるといいなと思っています。小さいことだと、「こんな些細なことを言うのは恥ずかしい」、「口にするには物足りない」と思いがちですが、発信してみると「私もそれ好きです!」という人が集まってきます。なので、興味があることは口に出してみる、他人に言ってみるということは絶対にしてほしいです。
あとは、是非そういった「やりたい!」と声を上げた人に乗っかる、応援することも大切にしてほしいです。どうしても、何か発信した人に向けて「なんでわざわざやるの?」と足を引っ張るようなことをいう人もいる。それが理由になって想いを口に出せないという人も多いと思うので、きちんと応援してあげることも凄く大切だと考えています。
―最近は、既定路線思考が特に強まっているなと感じていて。失敗を怖がらないマインドにどうしたらなれるのかと悩む学生も多いと思っています。
うちの会社では、むしろ「早く失敗してね」と言っています。やっぱり失敗は怖いし、失敗は”するもの”です。なので、失敗しないことがそもそも有り得ない。「人は初めてやることは大概失敗するものだよ」と思っていると、「だよね、失敗したよね」と想定内の出来事として受け止められるんです。
だからこそ、失敗なしで上手くいくと思わずに、早めに行動を起こして早めに転ぶ。そうするとリカバリーが効きます。少しでも「ん?」と思ったタイミングで違和感を口に出すと、周りからたくさんアドバイスをもらえるので。失敗を恐れないというよりは、「失敗はするものだ」と思っていた方がいいと感じています。
グリーディーのこれから・大学生へのメッセージ
―今後の展望を教えてください。
やはり「Be greedy」の一言に尽きますね!私自身が何かを成し得たいというよりは、やりたいことをやれる子が増えることが、私自身が凄く見たい世界です。なので、そういった子たちをきちんと支えられる会社にすることが一番やりたいことです。
―就活など、進路選択の時期に入る大学生に、アドバイスをお願いします!
ありがちですが、少しでも自分が興味のあることを扱っている会社に入った方がいいと思っています。新人のときから面白い仕事って、なかなかできる人は少ない。なので、興味関心や「自分は何がしたいんだっけ」という基準で選ぶことが大切だと感じています。
そこが明確でなければ、何かアンテナに引っかかったところに行ってみるのもアリだと思います。あとは、やりたいことと、会社から求められることにギャップが出てくることもあります。そんなときは、あれこれ悩まずにまずは、一旦目の前のことを全力でやってみると、また別の道が開ける気がしています。
―ありがとうございました!
浜出理加さん/株式会社グリーディー 公式SNS
<編集後記>
石原愛珠/Ishihara Manami:昨年の夏、旅行で三陸の地を踏んだときに感じたのは震災の痛みだけでなく、それよりももっと大きい生命力や力強さでした。私自身東北に繋がりがあることもあり、石巻で地元の人と交流を重ねながら香りから始まる「癒し」についてお話を伺うことができとても嬉しかったです。女子大に通い、ジェンダーについて考えることが多い自分にとって「もっと欲張っていい」という言葉は物凄く刺さりました。場所や性別を始めとした様々な要素がもたらす壁を、少しでも打ち崩していきたい。自分のやりたいこと、経験したいと思うことに正直に真っ直ぐに進んでいこうと思えた時間でした。この取材に関わってくださった、浜出様を始めとする全ての方に心から感謝を申し上げます。ありがとうございました!