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強い経営で、障がい者雇用に対する理解を伝える/日本理化学工業

ソーシャルビジネス特集第2弾です! 

今回は、ダストレスチョークを製造する日本理化学工業株式会社です。

日本理化学工業は、知的障がい者を積極的に雇用しています。その割合、なんと全従業員の70%以上!どうやってそれほど多くの障がい者を雇用し、事業を継続させているのでしょう?社長の大山さんにお話を伺いました!

 

 


チョークを製造するのに使う道具について説明する大山さん

 

・まず、事業内容について教えてください。

 「ダストレスチョーク」という、粉末が飛散しづらいチョークを製造しています。現在国内シェア40%以上を誇っています。

 

・40%以上とは驚きです。 御社が力を入れられている障がい者雇用について、詳しく教えてください。

 

  全従業員83名のうち、61名が知的障がい者です。その中には重度の障がい者もいます。

 どうしてそれほど多くの知的障がい者を雇用するようになったかというと、先代の社長である私の父のところに、養護学校の教師が知的障がいの生徒を働かせてくださいと来たのがはじまりでした。当初は門前払いをした父でしたが、何度もお願いに来るその方の熱意に負けて、2週間だけ実習を許したのです。簡単なラベル貼りの仕事を与えたのですが、生徒たちは目を見張るほどの集中力で一心不乱に取り組んだそうです。

 

そして2週間の実習期間が終わろうとした時、社員全員が社長の元へやってきてこう言いました。「実習だけと言わず、あの子達を雇ってもらえませんか?彼女達に出来ないことは私たちが協力しますので、お願いします」と。

たぶん最初は「かわいそうだから」という同情の気持ちだったと思いますが、雇用して分かったことは、彼らは本当に一生懸命、責任感を持って仕事をしてくれますし、仕事に対するプライドをきちんと持っているということです。

 

・そのようなきっかけだったのですね。
障がい者雇用で配慮している点というのはありますでしょうか?
 

 

障がい者の人々には、伝え方や教え方など、色々なことを配慮する必要は当然あります。たとえばうちでは、字が読めない人には色で分かる工夫をしたり、数字が読めない人には時計ではなく砂時計を使ってもらったりなど、一人ひとりの理解力に合わせた様々な工夫をするよう努力しています。

 


長さや太さが正確に測れなくても、この入れ物に入れば適切な長さ太さのチョークだと分かる仕組み 

 

・なるほど、面白い工夫です。
ところで、業績もきちんとあげられているのですね。
 

決して自慢できるほどの業績ではないですが、やはりうちは彼らがいなければ会社が回らないので、彼らにきちんと給料を払えるよう、強い経営ができることを常に目指しています。

 

それができなければ、「いい会社ですね」と言ってくれる人はいるかもしれませんが、誰も障がい者雇用をやりたいとは思わないでしょう。そこで止まっていたら我々の存在意義はありません。60年近く障がい者雇用をやっている理化学工業の使命は、彼らには本当に色々なことができるのだという、正しい障がい者雇用に対する理解を伝えていくことですから、それを伝えていくために一番必要なのは強い経営にすることだと思っています。

 

・お仕事をされている中で、何か嬉しかったエピソードなどありましたら教えてください。 

 

4月から消費税が上がるという時に、前倒しで注文が殺到しました。予測はしていましたが、製造が追いつかず、残業や休日出勤などをしてもらい対応をしていました。3月の最終週に、障がいを持つ1人の従業員が私の所にやってきてこう言いました。

 

「今週の土曜日出なくていいの?」

 

目処はついていたので、「大丈夫だよ」と私が言うと、

 

「会社大変なんでしょ?ぼく出るよ」

 

と言ってくれたんです。重度の子ですよ。あれは本当に嬉しかった。思わずその場で泣きました。 

 

 

重い知的障がいがあっても会社の状況を分かっているし、自分が何をすべきなのか、きちんと伝わっているんだなと改めて分かり、とても嬉しかったです。

 

・素晴らしいエピソードですね。
ところで、貴社ではほとんどの従業員が障がい者ですが、チョーク工場だから障がい者雇用がしやすいという側面はあるのでしょうか?
 

 

いえ、チョーク工場しか障がい者雇用ができないということはないと思います。

 

たとえばIT関連の会社の方とお話するときに、「うちはこういう会社だから障がい者雇用はなかなかできないんだよね」と言われることはあります。確かに、プログラミングやデザインは出来ないかも知れませんが、どんな会社の中でも障がい者が出来る仕事は必ずあると思います。 

 

障がいを持つ人と一緒に仕事をしていると、絶対に会社の空気が良くなります。きちんと伝えていく難しさもありますが、人として優しくなり、成長できます。また、障がいを持つ社員たちの頑張りを見れば、きっとその彼らの成長の後押しをしたいと思うようになり、健常者の社員のモチベーションも確実に上がるはずです。会社全体にとって良い影響が生まれるのではないかと思います。

 


実際の作業現場 

 

最後に、学生へのメッセージをお願いします! 

 就職をすると、色々な意味でギャップがあるはずですし、思い描いたとおりの仕事をできる人は少ないかも知れません。でも、その仕事を好きになることだけは誰にでもできるのではないでしょうか?仕事は好きにならないと絶対に上手にならないし、自分の成長も少ないのではないかと思います。

 

 それはうちの社員を見ていて強く思う事です。みんなチョーク作りを一生懸命、楽しそうにやっているおかげで、どんどん上手になっていっています。 

 

ですから、学生の皆さんに限らないことですが、「これは俺がやる仕事じゃないな」と思わず、目の前のことを一生懸命やって、好きになる努力をして欲しいです。そうしてこそ、好きな道というのが見えてくると思います。

 

大山さん、どうもありがとうございました! 

 

<Information>

 ホームページ / Facebook

 

【ソーシャルビジネス企画記事一覧】

コラム:ソーシャルビジネスって何?この記事ひとつで丸分かり!

第一弾:証拠に基づき、報道の正確性を検証する/日本報道検証機構

(第二弾:強い経営で、障がい者雇用に対する理解を伝える/日本理化学工業)

第三弾:みんなの夢を実現する伴奏者でありたい/ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ

第四弾:Facebookのいいね!で、“公共革命”の足がかりに/gooddo株式会社

第五弾:発達に課題があっても受け入れられる社会を目指して ハッピーテラス株式会社

第六弾:多様な経歴やハンデがある人を雇用する/アイエスエフネットグループ

 

(編集後記) 

仕事において、障がいは弱みになるのではなく、適切な配慮と工夫さえすれば逆に強みになるのだということがよく分かりました。そのことを確かな経営力を持って証明している日本理化学工業さんは、これから障がい者雇用をしようと考えている多くの企業にとって大きな希望になるのではないかなと思いました!(久保)

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